自転車の発達とテクノロジー
いまから35年前、石油ショックという大きな社会問題が発生した、その時代にSCIENTIFIC AMERICAN 日本版1973年5月号の記事、S.S.ウイルソンさんが書いた「自転車の発達とテクノロジー」を読んだことがあります、その内容には。「自転車で移動する人間は、どの動物どの機械よりも、物理的効率がよいらしい。」彼が整理した1枚の図表、自転車の効率の良さはひとめ見ただけで素晴らしさが理解できる。記事は古いが簡潔にまとめられた自転車の良さであり、現在でも通用するのでポイント部分を要約して紹介しよう。
この石油ショック事件をきっかけに世界は化石燃料を燃やすことによって大気中のCO2が増加して地球の温暖化と言う環境悪化が起こるという問題に気がつ き、その対策として省エネが本格的に取り上げられるようになり自動車などは、ダウンサイジングによって小型・軽量化・低燃費の出現となり日本の企業にとって追風となった、今ではビッグスリーを超える時代になった。更にエコロジーの提唱で自動車から自転車へと転換が期待されている。
自身もこの時期にはV8-7000CCの自動車をやめて専ら公共交通機関を利用することにした。その後、整備の行き届いた自転車道の近くに住むことから積極的に自転車を活用しようと折りたたみ自転車を手に入れ電車と自転車の良いとこ取りで「自電車」で旅をする試みをはじめた。
その後、先端技術の発展に伴いクロモリと言うハイテンション鋼からアルミ・カーボン・チタンというような素材が利用されるようになってきている。これらはゴルフクラブのシャフトとの共通点が多く、スポーツ指向のものは、いまではカーボンが主流になっているようだ、更に高張力のステンレス(SUS630)ヘッドなどが使用されている、そのうち自転車にも取り入れられるようになると思はれる。
ゴルフのシャフトはハイテンション鋼が主流で一時期アルミ・チタンが出現したことはあったが、いまでは誰も使っていないようだ、自転車ではアルミ合金の使用例が多くあり、また、チタンも高価な素材ではあるが一部で商品化されている。だが、私的な予想であるがアルミとチタンはゴルフクラブの素材と同様、自転車もこれに変って薄肉のステンレス(SUS630)チューブが利用されるようになるものとも思う。
さて、私たちが求めるレジャーバイクは公共交通機関、主として列車に手荷物として持ち込むことから極力軽量でありかつコンパクトなものが必要だ、そのため利用するホイールは700Cでは無く20インチ以下の小径車となる。また、現在折りたたみ自転車が主流であるがヒンジ構造のものが多いが強度を保持するために重量がかさむという難点があり10kg以下にするのは難しいようだ。
ご近所には競輪選手が使用するピストバイクのビルダーとかロードレーサーに乗るお友達がいて、いっしょに走りましょうとお誘いを受けることがある、だが、この人たちは時速30kmを超えるスピードで走る競技指向で、私たちのレジャー指向とは内容が大きく違う。
ロードレーサーのように高速で走ることが困難な市販の折りたたみ自転車ではお付き合いが難しいことから高速走行も可能な軽量で折りたたみ、あるいは分割式のレジャー向けの自転車を制作するようになった。その後、いろんな形で支援いただいた御礼に、スポーツ指向とは異なるレジャー向けの自転車の考え方と制作の記録を取りまとめて見ようと書き始めたものである。
私たちは重量が8kg以下でロードレーサーに匹敵するスピードも出せるというもの、また、タンデムタイプで輪行ができ、かつ、重量が10kg以下になるようなものを実現しようとしている、最近の報道によるとママチャリの3人乗りについて、それに見合う自転車の出現が期待されている、これにも答えられるよう現在デザインと試作をはじめてみようと思う。ここでは、これまでに実現したものについて取りまとめご覧いだき、少しは社会貢献になればと筆をとる次第である。
多くの人々子供から大人まで一生一台利用できる環境にやさしく省資源のレジャーバイク、オンリーワンの自転車を考えたりつくつたりすることができるようになることを期待し参考になるようなものに取りまとめたい。この結果から多くの賛同と支援により、やがて一台のオリジナル自転車が日本発から世界に向けてバタフライ効果が発揮されることになれば本物だといえよう。
ここでの記述は考え方を取り上げるものであって出来上がった物を提供するというビジネスに関与しようというものではない、あくまで趣味として考える楽しみを享受することを目的とするものである。
2003/05 X24
自転車というハードウェアとソフトウェア
自転車というハードウェアの機能あるいはコンセプトは 1.走る 2.止まる 3.曲がる という3項目に集約される、これに乗り手に最適化したソフトとスキルが快適な走行を約束するとう単純な原理で成り立っている。その概要は地上を走る乗り物、例えば新幹線のような高速鉄道から自動車、オートバイそして自転車にいたるまでの基本的な原理としてこれまでにいろんな形で発表されている。それを基に整理して基本になる数式を提示する。ここからは多くのことが推察できる、コミュニケーションの手段として、文章で表現すると曖昧さを残すことになるので極力オーソライズされている数式を取り出して表現することにした。
1.走る
この全てに関わっている重要な部品はフレームと唯一路面と接触しているタイヤです。ペダルの回転から作り出す力はクランクを経由してタイヤに伝わり、タイヤは路面との摩擦により駆動力を路面に伝え、その反力で自転車は走っています。自転車はタイヤがあって始めて走る、止まる、曲がるが出来るといえます。
まず走る事の“最高速度について考えると
「Vmax=√(F-μr W)/CdρA」
ここで、F=駆動力(ペダルの力だけでなくタイヤの持つグリップ力も含む)、W=総重量、A=前面投影面積、μr=転がり抵抗係数、Cd=空気抵抗係数、 ρ=空気密度となる。
最高速度を上げるには、ペダルの駆動力をより大きく、転がり抵抗を小さく、空気抵抗係数と前面投影面積を小さくする必要がある事がこの式から判る。特に空気抵抗は速度による依存度が高いので、最高速度の向上を目指すのに大切な項目である。
もう一つの走る事、加速”について考えると
「α=g (F-μr W-CdρAV2)/(1+φ) W」
ここで、α=加速度、g=重力加速度、φ=Wr/W、Wr=回転部相当重量となる。
加速度を上げるには、ペダルの駆動力をより大きく(タイヤのグリップ力も大きく)、転がり抵抗、空気抵抗を小さく、重量を小さくする必要がある事が読み取れる。
2.止まる
次に“止まる”について考える、止まる事は負の加速度を持つ事である。(減速度と言う)従って加速度を求める式と同じ式が当てはまり、Fに駆動力ではなく、ブレーキ力を当てはめる事になる。従って転がり抵抗や空気抵抗もブレーキの効果に寄与している事が判るが、ここでは、ブレーキ力だけを取り出して考えてみる。ブレーキ力は
「Fb=Bf+Br=Wα/g」
となり、Bf=前輪制動力, Br=後輪制動力, α=減速度。そして自転車のホイールベース=L,重心高さ=Hとすると「Bf=α/g (Wf+W α/g H/L), Br=α/g (Wr-Wα/g H/L)」
「Fb=Bf+Br=Wα/g」
となり、Bf=前輪制動力, Br=後輪制動力, α=減速度。
そして自転車のホイールベース=L,重心高さ=Hとすると
「Bf=α/g (Wf+W α/g H/L), Br=α/g (Wr-Wα/g H/L)」
と言う式が成り立つ。この式から、重心位置が高いほど前輪への荷重移動が多く、ホイールベースが長いほど荷重移動が少ない事が判る。前後2輪がそれぞれ最大限のブレーキ力を得るには、荷重移動が少ない事が要求される。従って、強力なブレーキに、グリップ力の高いタイヤと低い重心位置と長いホイールベースが要求される。
3.曲がる
曲がると言う事は、乗り手の意思によりハンドルが切られ、タイヤにSlip角が与えられる。この為タイヤの接地面に多くの抵抗が生じ、その生じた抵抗を緩和する為に、自転車はハンドルを切った方向に向きを変えることになる。一定半径上を、自転車が円運動している事を想定すると
「Fr=mV2/r」
となる。Fr=自転車の重心に掛かる力、m=自転車の質量、V=車速、r=半径。一定のコーナーを、より速い速度で通過するには、より大きなFr、小さな自転車の質量m(軽い車体)が必要になる。では如何にしてFrを大きくするかを考える。
「Fr=Woμ」
と言う式が成り立つ。Wo=タイヤを地面方向に押している荷重(空気の力によるDown Forceがある時は、W+Down Forceとなる)、μ=タイヤの持つ路面との摩擦係数。故に、速い速度でコーナーを曲がるには、軽い車体、大きなDown Force、そして高いグリップ力を持つタイヤが必要になる。ブレーキの時と同じくタイヤの最大能力を得るには、荷重移動が少ない事が要求される。従って、より速い速度でコーナーを曲がるには、上記の3項目と、低い重心と幅広いトレッドが要求される。
自転車の基本運動原理3項目は以上のような簡単な数式で説明できるものである。科学とか物理あるいは工学という技術に関与する人々と対話であれば、これで終わりという事になる。といえばお叱りを受けることになろう。以下の記述は、此れに基づいて実例を示しながら解説を試みるものである。
この原理から類推される自転車というハードウェアに対する要求は下記に示したようなものである。
1.大きなペダル出力は筋力の増強と高速回転
2.少ない転がり抵抗は軽い車体・ベアリング・高圧タイヤ
3.少ない空気抵抗はリカンベント形状・投影面積を小さくする
4.ブレーキ力は高いグリップ力を持つタイヤ・低い重心・長いホイールベース
この基本を満たしたもので、いま同じペダル数で同じ車体を使っている限り、全項目とも同じか或いは殆んど同じと言えるものがあった場合。そこで他の自転車との差を、何処で付ける事が出来るのか?と言う事になる。そしてこれから先が知恵の出し比べであり、ソフトの領域で乗り手の感性とテクニックあるいはスキルに合わせた細かなセッテイングの追求と言う事になる。自転車というハードの制作あるいは改造でも、これらが大きな鍵を握っている、そしてソフトと組み合わされてはじめて快適な走行が実現される。
以上のように基本原理は単純なものであることがご理解いただけたと思う、実際に作るとすれば初歩の構造力学と材料物性について多少の知識は必要だ、だが、現在は、コンピュータが発達した時代なである。データベースの活用と計算という面倒な手間はかけなくても誰もが容易に自分の特性に見合った仕様を求めることができる。興味のきっかけになれば喜ばしいことだ。
これがきっかけで更に深く創造的楽しみを味わうことが趣味の醍醐味といえる、頭脳で科学を楽しむと同じように技術の分野で体をはって実験をしたりする目的で、構造力学・流体力学・物性工学・加工技術などに興味が湧きその分野における知識と成果の獲得は一層の喜びと楽しみを持つことができるだろう。
この後には素材の物性と力学について記述する予定であるが、わかりやすい表現を模索中である。
「自転車は、構造的・機械的に非常に効率のよいものであり、人間を運ぶために大量生産された最初の機械である。その発達の途上で使われるボールベアリン グ、空気タイヤ、管構造などの技術は自動車や航空機に受け継がれ近代技術への貢献は計り知れない」。
自転車の目的は、個人が容易に移動することができる、自転車は自然の進化よりずっとすぐれた方法でこの目的を達成した。
一定の距離を移動する時に消費するエネルギーを、いろんな動物や機械についての重量の関数として比較してみると、普通に歩く人間は、かなりよい値 (0.75cal/g/km)であるが、人間は馬や鮭、またはジェット機ほど効率がよくない。
だが自転車の助けがあれば、一定の距離に対する人間の消費量は約5分の1に減少する(約0.15cal/g/km)。人間が速度を3倍から4倍増すこと のほかに、自転車に乗る人は、動く動物や機械のなかで高い効率を誇ることになる。
この性能を発揮するために、自転車は人間工学的に最適化設計に発展してきた。それは筋(最も強力な大腿の筋)を、理にかなった関節運動(足の滑らかな回転 運動)で、一定速度(ケイデンス=60〜80回転)で運行させる。
この実現は動力を効率よく伝達しなければならない。(ボール・ベアリングとブッシュ・ローラーのチェーンなど)。そして回転抵抗を最小 にすること(空気タイヤの利用)。またペダルをこいで坂を登る難儀を減少するために、極力軽量でなければならない。
自転車は歩行に比較してエネルギー効率が高い理由は、主として筋の運動方式にあるようだ。自転車は、ある距離を動くことによって機械的な仕事を行なう。一 方、筋は緊張しているが動いていないとき(いわゆる”静止状態”のとき)でも、エネルギーを消費している。静かに立っている 人間は、骨を圧縮し、筋を張るという複雑なシステムで直立姿勢を維持している。
ただ立っていてもエネルギーを消費する。また、シャドウ・ボクシングをするように、外部に何の力もおよぼさずに運動する場合でも、 筋のエネルギーは消費されるし、外部に力に対して何ら機械的仕事は行われなくても、手と腕は交互に加速と減速を繰り返すからであるともいえる。
歩くとき下肢の筋は身体の他の部分を直立姿勢に支持するとともに、身体全体を持ち上げたり下げたり、加速したり減速したりしなければならない。すべてこれ らの運動は、有用な外部仕事を何もせずにエネルギーを消費する。
坂を登るときには、重力に対する仕事が付加される。このようにエネルギーを消費する以外にも、足底が地面と接触するたびにエネルギーが失われる。これは、 道路、靴、靴下が消耗することによって明らかである。腕や足を振ることも、摩擦による消耗やエネルギー損失をおこす。
これを自転車に乗ることを比較すると、第一に自転車に乗る場合は座っているのでエネルギーが節約される。脚(下肢)の筋を支持機能が解放され、これに伴う エネルギー消費を節約することになる、身体の中での往復運動部分は、膝と大腿でが中心となる。
脚の関節運動はは一定の速度でなめらかに回転し、身体の他の部位は静止しているので最も強い筋のみが使われる、脚による加速と減速が効率よく達成される。
上昇する脚 はもち上げる必要はなく、もう一方の脚の下向きの推力によって上げられる。一般的なサイクリング姿勢において、背中の筋は胴を支持するために使用される が、 腕もこれを補助することができ、手と腕にはわずかな緊張しか残らない。
自転車競技の選手などは、風の抵抗を減少させるために、快適とはいえない前傾姿勢をすることで風の抵抗にたいするエネルギー損失抑制している。風による抵 抗は、自転車乗りに対して、風の速度の二乗に比例して大きくなる。
この様子は、毎時20kmで、毎時10kmの風にさからってサイクリングするとすれば、毎時10kmの追風にのって同じ速度を維持する場合よりも、風の抵 抗は9倍も大きくなる。
実際には、多くの自転車乗りが知っているように、最適なペダル速度を維持するために、ギア比を変化させて風の状態に合うように自転車の速度を調整する(ケ イデンスを重視する乗り方)。
風の抵抗以外で、重要なエネルギー損失には、ころがり抵抗がある。車輪に適当な空気を入れたタイヤであれば、ころがり抵抗は滑らかな表面では小さく、速度 の影響はほとんど受けない。
デザイン設計の全ての部分が乗り手の体格と関連しているので、自転車全体がつねに乗り手のサイズに合っていなければならない。軽量な構造の実現は、主とし てワイヤ・スポーク の車輪と管構造の開発によるものであり、これか゜自転車のペダルをこいで坂を登らねばならないという事実といえる。
自転車という乗り物は材料やエネルギー源の要求が少なく、環境汚染への影響が少ないこと、健康によい影響を与え、死傷事故もすくないので、最も博愛的な機 械と見ることができる。
この石油ショック事件をきっかけに世界は化石燃料を燃やすことによって大気中のCO2が増加して地球の温暖化と言う環境悪化が起こるという問題に気がつ き、その対策として省エネが本格的に取り上げられるようになり自動車などは、ダウンサイジングによって小型・軽量化・低燃費の出現となり日本の企業にとって追風となった、今ではビッグスリーを超える時代になった。更にエコロジーの提唱で自動車から自転車へと転換が期待されている。
自身もこの時期にはV8-7000CCの自動車をやめて専ら公共交通機関を利用することにした。その後、整備の行き届いた自転車道の近くに住むことから積極的に自転車を活用しようと折りたたみ自転車を手に入れ電車と自転車の良いとこ取りで「自電車」で旅をする試みをはじめた。
その後、先端技術の発展に伴いクロモリと言うハイテンション鋼からアルミ・カーボン・チタンというような素材が利用されるようになってきている。これらはゴルフクラブのシャフトとの共通点が多く、スポーツ指向のものは、いまではカーボンが主流になっているようだ、更に高張力のステンレス(SUS630)ヘッドなどが使用されている、そのうち自転車にも取り入れられるようになると思はれる。
ゴルフのシャフトはハイテンション鋼が主流で一時期アルミ・チタンが出現したことはあったが、いまでは誰も使っていないようだ、自転車ではアルミ合金の使用例が多くあり、また、チタンも高価な素材ではあるが一部で商品化されている。だが、私的な予想であるがアルミとチタンはゴルフクラブの素材と同様、自転車もこれに変って薄肉のステンレス(SUS630)チューブが利用されるようになるものとも思う。
さて、私たちが求めるレジャーバイクは公共交通機関、主として列車に手荷物として持ち込むことから極力軽量でありかつコンパクトなものが必要だ、そのため利用するホイールは700Cでは無く20インチ以下の小径車となる。また、現在折りたたみ自転車が主流であるがヒンジ構造のものが多いが強度を保持するために重量がかさむという難点があり10kg以下にするのは難しいようだ。
ご近所には競輪選手が使用するピストバイクのビルダーとかロードレーサーに乗るお友達がいて、いっしょに走りましょうとお誘いを受けることがある、だが、この人たちは時速30kmを超えるスピードで走る競技指向で、私たちのレジャー指向とは内容が大きく違う。
ロードレーサーのように高速で走ることが困難な市販の折りたたみ自転車ではお付き合いが難しいことから高速走行も可能な軽量で折りたたみ、あるいは分割式のレジャー向けの自転車を制作するようになった。その後、いろんな形で支援いただいた御礼に、スポーツ指向とは異なるレジャー向けの自転車の考え方と制作の記録を取りまとめて見ようと書き始めたものである。
私たちは重量が8kg以下でロードレーサーに匹敵するスピードも出せるというもの、また、タンデムタイプで輪行ができ、かつ、重量が10kg以下になるようなものを実現しようとしている、最近の報道によるとママチャリの3人乗りについて、それに見合う自転車の出現が期待されている、これにも答えられるよう現在デザインと試作をはじめてみようと思う。ここでは、これまでに実現したものについて取りまとめご覧いだき、少しは社会貢献になればと筆をとる次第である。
多くの人々子供から大人まで一生一台利用できる環境にやさしく省資源のレジャーバイク、オンリーワンの自転車を考えたりつくつたりすることができるようになることを期待し参考になるようなものに取りまとめたい。この結果から多くの賛同と支援により、やがて一台のオリジナル自転車が日本発から世界に向けてバタフライ効果が発揮されることになれば本物だといえよう。
ここでの記述は考え方を取り上げるものであって出来上がった物を提供するというビジネスに関与しようというものではない、あくまで趣味として考える楽しみを享受することを目的とするものである。
2003/05 X24
自転車というハードウェアとソフトウェア
自転車というハードウェアの機能あるいはコンセプトは 1.走る 2.止まる 3.曲がる という3項目に集約される、これに乗り手に最適化したソフトとスキルが快適な走行を約束するとう単純な原理で成り立っている。その概要は地上を走る乗り物、例えば新幹線のような高速鉄道から自動車、オートバイそして自転車にいたるまでの基本的な原理としてこれまでにいろんな形で発表されている。それを基に整理して基本になる数式を提示する。ここからは多くのことが推察できる、コミュニケーションの手段として、文章で表現すると曖昧さを残すことになるので極力オーソライズされている数式を取り出して表現することにした。
1.走る
この全てに関わっている重要な部品はフレームと唯一路面と接触しているタイヤです。ペダルの回転から作り出す力はクランクを経由してタイヤに伝わり、タイヤは路面との摩擦により駆動力を路面に伝え、その反力で自転車は走っています。自転車はタイヤがあって始めて走る、止まる、曲がるが出来るといえます。
まず走る事の“最高速度について考えると
「Vmax=√(F-μr W)/CdρA」
ここで、F=駆動力(ペダルの力だけでなくタイヤの持つグリップ力も含む)、W=総重量、A=前面投影面積、μr=転がり抵抗係数、Cd=空気抵抗係数、 ρ=空気密度となる。
最高速度を上げるには、ペダルの駆動力をより大きく、転がり抵抗を小さく、空気抵抗係数と前面投影面積を小さくする必要がある事がこの式から判る。特に空気抵抗は速度による依存度が高いので、最高速度の向上を目指すのに大切な項目である。
もう一つの走る事、加速”について考えると
「α=g (F-μr W-CdρAV2)/(1+φ) W」
ここで、α=加速度、g=重力加速度、φ=Wr/W、Wr=回転部相当重量となる。
加速度を上げるには、ペダルの駆動力をより大きく(タイヤのグリップ力も大きく)、転がり抵抗、空気抵抗を小さく、重量を小さくする必要がある事が読み取れる。
2.止まる
次に“止まる”について考える、止まる事は負の加速度を持つ事である。(減速度と言う)従って加速度を求める式と同じ式が当てはまり、Fに駆動力ではなく、ブレーキ力を当てはめる事になる。従って転がり抵抗や空気抵抗もブレーキの効果に寄与している事が判るが、ここでは、ブレーキ力だけを取り出して考えてみる。ブレーキ力は
「Fb=Bf+Br=Wα/g」
となり、Bf=前輪制動力, Br=後輪制動力, α=減速度。そして自転車のホイールベース=L,重心高さ=Hとすると「Bf=α/g (Wf+W α/g H/L), Br=α/g (Wr-Wα/g H/L)」
「Fb=Bf+Br=Wα/g」
となり、Bf=前輪制動力, Br=後輪制動力, α=減速度。
そして自転車のホイールベース=L,重心高さ=Hとすると
「Bf=α/g (Wf+W α/g H/L), Br=α/g (Wr-Wα/g H/L)」
と言う式が成り立つ。この式から、重心位置が高いほど前輪への荷重移動が多く、ホイールベースが長いほど荷重移動が少ない事が判る。前後2輪がそれぞれ最大限のブレーキ力を得るには、荷重移動が少ない事が要求される。従って、強力なブレーキに、グリップ力の高いタイヤと低い重心位置と長いホイールベースが要求される。
3.曲がる
曲がると言う事は、乗り手の意思によりハンドルが切られ、タイヤにSlip角が与えられる。この為タイヤの接地面に多くの抵抗が生じ、その生じた抵抗を緩和する為に、自転車はハンドルを切った方向に向きを変えることになる。一定半径上を、自転車が円運動している事を想定すると
「Fr=mV2/r」
となる。Fr=自転車の重心に掛かる力、m=自転車の質量、V=車速、r=半径。一定のコーナーを、より速い速度で通過するには、より大きなFr、小さな自転車の質量m(軽い車体)が必要になる。では如何にしてFrを大きくするかを考える。
「Fr=Woμ」
と言う式が成り立つ。Wo=タイヤを地面方向に押している荷重(空気の力によるDown Forceがある時は、W+Down Forceとなる)、μ=タイヤの持つ路面との摩擦係数。故に、速い速度でコーナーを曲がるには、軽い車体、大きなDown Force、そして高いグリップ力を持つタイヤが必要になる。ブレーキの時と同じくタイヤの最大能力を得るには、荷重移動が少ない事が要求される。従って、より速い速度でコーナーを曲がるには、上記の3項目と、低い重心と幅広いトレッドが要求される。
自転車の基本運動原理3項目は以上のような簡単な数式で説明できるものである。科学とか物理あるいは工学という技術に関与する人々と対話であれば、これで終わりという事になる。といえばお叱りを受けることになろう。以下の記述は、此れに基づいて実例を示しながら解説を試みるものである。
この原理から類推される自転車というハードウェアに対する要求は下記に示したようなものである。
1.大きなペダル出力は筋力の増強と高速回転
2.少ない転がり抵抗は軽い車体・ベアリング・高圧タイヤ
3.少ない空気抵抗はリカンベント形状・投影面積を小さくする
4.ブレーキ力は高いグリップ力を持つタイヤ・低い重心・長いホイールベース
この基本を満たしたもので、いま同じペダル数で同じ車体を使っている限り、全項目とも同じか或いは殆んど同じと言えるものがあった場合。そこで他の自転車との差を、何処で付ける事が出来るのか?と言う事になる。そしてこれから先が知恵の出し比べであり、ソフトの領域で乗り手の感性とテクニックあるいはスキルに合わせた細かなセッテイングの追求と言う事になる。自転車というハードの制作あるいは改造でも、これらが大きな鍵を握っている、そしてソフトと組み合わされてはじめて快適な走行が実現される。
以上のように基本原理は単純なものであることがご理解いただけたと思う、実際に作るとすれば初歩の構造力学と材料物性について多少の知識は必要だ、だが、現在は、コンピュータが発達した時代なである。データベースの活用と計算という面倒な手間はかけなくても誰もが容易に自分の特性に見合った仕様を求めることができる。興味のきっかけになれば喜ばしいことだ。
これがきっかけで更に深く創造的楽しみを味わうことが趣味の醍醐味といえる、頭脳で科学を楽しむと同じように技術の分野で体をはって実験をしたりする目的で、構造力学・流体力学・物性工学・加工技術などに興味が湧きその分野における知識と成果の獲得は一層の喜びと楽しみを持つことができるだろう。
この後には素材の物性と力学について記述する予定であるが、わかりやすい表現を模索中である。
by tasukei-x24
| 2009-07-23 14:58
| 基礎